アルプスの山小屋案内

ヨーロッパアルプスの山小屋を案内するブログです。1990年代の情報のため、現在の状況と異なる場合があります。

アルプスの山小屋案内#12 - ムートホルン小屋(Mutthornhütte)

はじめに

今日はベルナー・オーバーラントのムートホルン小屋をご案内します。
本記事を読む前に、以下の記事を一読されることをおすすめします。 alpes.hatenablog.com

ガステルンタールのハイムリッツからムートホルン小屋、レッチェンタールのファフレラルプまでの略図
ガステルンタールのハイムリッツからムートホルン小屋、レッチェンタールのファフレラルプまでの略図

山域

ベルナー・オーバーラン

リゾート

カンデルシュテーク、レッチェンタールのファフレラルプ

ロケーション

ガステルンタールのカンデルフィルンとラウターブルンネンをつめたチンゲルフィルンのサドル(鞍部)にあり、四方向からアプローチができる恵まれたロケーションにある。

標高

2901m

出発地

カンデルシュテークのガステルンタール、レッチェンタールのファフレラルプ、さらにキエンタールのグシュパルテンホルン小屋からも

用具

アイゼン、ピッケル(ストック)、パーティとしてザイル(20m以上)。

難しさ

技術的には課題はないが、完全な氷河上の山行。

所要時間

ガステルンタールのハイムリッツ〜ムートホルン小屋

6時間

ムートホルン小屋〜ペータースグラート〜レッチェンタールのファフレラルプ

4時間

カテゴリー

  1. AA
  2. AA
  3. AA
  4. AA

※カテゴリー詳細はこちら

コースのアウトライン

カンデルシュテークからゼルデンまではプライベートのミニバスが運行されている。ゼルデンからは平坦な道を20分でハイムリッツへ。ここには放牧の牛や羊を管理すると共にハイカーや登山者にベットと食事を提供する素朴な山の一軒家がある。さらに流れに沿って歩き、高山植物の咲き乱れる古いモレーンの土手をいくとカンデルフィルン(氷河)の先端につく。この氷河は傾斜もゆるく、早朝の雪がしまっている時に通過すれば技術的な課題はなく、楽しい雪上歩行となる。
翌日のペータースグラート越えは標高差300mあるがチンゲルホルン(3576m)や、ブリュームリアルプ連山が目線の高さにせまっての大パノラマが足取りを軽くしてくれる。ペータースグラートからの下降は2900m地点あたりで雪は消えて、ファフレタールの流れが現われ、左岸の踏み後がファフレラルプの小集落に導いてくれる。

ワンポイント

このトレッキングは穏やかではあるが氷河を歩き、標高3200mのペータースグラートの雪稜をこえるので、アルピニストへの第一歩の高山入門の山行である。13世紀にはヴァリス州とベルナー・オーバーラント州を結ぶこの万年雪の雪稜をレッチェンタールの住民たちが越えていたと推定されている。ラウターブルンネンタールのトラクセラウエネン、ミューレン、グリンデルヴァルトヴァリス人が設立した居留地だったという。1483年に設立されたラウターブルンネンの古い教会の鐘はブライトホルンとチンゲルホルンの鞍部であるヴェターリュケを越えて運ばれたといわれ、その証拠もあげられている。また、レッチェンタールの村々には、日焼け小さな木造りの家々が斜面に雛壇のように並んでいて、ヴァリスの典型的な風景がみられる。この谷はもともと孤立していたうえに、カンデルシュテークがブリックとトンネルで結ばれてしまったおかげで、古くからの慣習が今に継承されていて魅力あるスイスの原風景に出会える。

アルプスの山小屋案内#11 - ブリュームリアルプ小屋(Blüemlisalphütte)

はじめに

今日はベルナー・オーバーラントのブリュームリアルプ小屋をご案内します。
本記事を読む前に、以下の記事を一読されることをおすすめします。 alpes.hatenablog.com

オエシネン湖のチェアーリフト山上駅からブリュームリアルプ小屋、キエンタールのバス停グリーサルプまでの略図
オエシネン湖のチェアーリフト山上駅からブリュームリアルプ小屋、キエンタールのバス停グリーサルプまでの略図

山域

ベルナー・オーバーラン

リゾート

カンデルシュテーク

ロケーション

キエンタールとカンデルを分けるホーテュルリの鞍部(2778m)をモルゲンホルン側へ少しあがった台地にある石造りの小屋。

標高

2834m

出発地

カンデルシュテークのオエシネン湖のチェアーリフト山上駅

用具

必要はない。

難しさ

標識・登山道がしっかりしているアルペンコース。いわゆる健脚向。

所要時間

オエシネン湖のチェアーリフト山上駅〜ブリュームリアルプ小屋

4時間

ブリュームリアルプ小屋〜キエンタールのバス停グリーサルプ

3時間

カテゴリー

  1. AA
  2. AAA
  3. A
  4. A

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コースのアウトライン

オエシネン湖への道はすぐに二つに分かれるから、左の道をとるとまたすぐに標識があり、オエシネン湖を右下にみて高捲く登山道のルートをしめしている。
もう一つは湖までいき、湖畔を歩いてからオーバーベルグリの山のレストランまで標高差400mをいっきに登るルートとがある。
前者はオエシネン湖まで下らないで、終始湖を眼下にする眺望にすぐれたルートであり推奨できるが、湖面から300mの足元のスパッとした登山道が狭いスリルのある箇所がある。
オーバーベルグリ(1978m)からの登山道は最初高山植物の咲ききそう小さな流れに沿っているが、周囲の雰囲気に誘われてこの水は飲まないことだ。登山道の左手に圧倒的な岩壁がせまってきて、右側の小さな氷河湖をすぎるとブリュームリアルプ水河が迫ってくる。
そして、左側の岩壁が一旦途切れると、そこにアルプが展開し放牧された牛の群れをみることができる。登ってくる時には全く想像もできないことであるが、地図を広げてみれば標高2411m、アルプの限界の高さである。こんな厳しいところに追い上げられる牛達も大変だ。この先は岩のガレのきつい登りがホーテュルリの狭いコルまで続く。小屋は氷雪に輝くブリュームリアルプ連山を背に、コルの右上にある。

ワンポイント

健脚向きのアルペンコースで、湖あり、お花畑あり、清流あり、岩山あり、氷河あり、そしてワイン樽のある素晴らしい山小屋に一泊してキエンタールの谷側へ下降すれば牛舎あり、チーズ小屋あり、さらにゴルジュの渓谷美を可愛いポストバスがパンパンパーンと独特の警報を鳴らして狭い道を巧みに下り、最後は段々畑と葡萄畑を通過してライヒェンバッハの駅に運んでくれる。
この駅はシュピーツとフルティゲンの中間のローカル駅なのでカンデルシュテークまでは、ここの路線を持つBLS鉄道がバスを運行している。鉄道だとループトンネルで通過してしまう山村の景色を楽しむ付録がつく。

アルプスの山小屋案内#10 - コンコルディア小屋(Konkordiahütte)

はじめに

今日はベルナー・オーバーラントのコンコルディア小屋をご案内します。
本記事を読む前に、以下の記事を一読されることをおすすめします。 alpes.hatenablog.com

ユングフラウヨッホ駅からコンコルディア小屋、キューボーデンまでの略図
ユングフラウヨッホ駅からコンコルディア小屋、キューボーデンまでの略図

山域

ベルナー・オーバーラン

リゾート

グリンデルヴァルト、ヴェンゲン、またはキューボーデン

ロケーション

アレッチ氷河コンコルディアプラッツのフルバルグ東端基部岩上

標高

2850m

出発地

ユングフラウ鉄道ユングフラウヨッホ駅(3475m)、またはキューボーデンから

用具

アイゼン、ピッケル(ストック)、パーティとしてザイル(20m以上)必要。

難しさ

技術的には課題はないが、完全な氷河上の山行

所要時間

ユングフラウヨッホ〜コンコルディア小屋

5時間

コンコルディア小屋〜キューボーデン

6時間

カテゴリー

  1. AAA
  2. AAA
  3. AAA
  4. AA

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コースのアウトライン

ガイドブックの"THE ALPINS by Classic Routes"にはオーソドックスにキューボーデンからのコース説明となっているが、翌日の登山のことを考えたとき、文明の利器を利用してユングフラウヨッホからの下降という楽なアプローチを選択することになる。
ヨッホのトンネルから大雪原に出たならば、すぐにアンザイレンしユングフラウフィルン(万年雪)の下降を開始する。
アルプスで最も広大なアレッチ水河の真っ只中を標高差約700mのゆるい雪上の下りでコンコルディアプラッツの大氷原へ、左岸岩壁上の小屋へは氷河が後退したため、100mもの磨かれた絶壁につけられた高層ビルの避難バシゴのような鉄製の階段をのぼらなければならない。
翌日の小屋からメルイェレ湖までは、表面の雪もほとんど消えているしモレーンが高速道路のように眺められるので、いとも易く思えるが、これは広大なスケールの真っ只中にいるために距離感が狂ってしまっての錯覚で、メルイェレ湖をへてキューボーデンまでは、たっぷり一日の行程とみておくべきである。

ワンポイント

地図を広げてみればわかるように、コンコルディアプラッツはその名のとおり氷河が四方から流れこむ広大な氷と万年雪の世界である。この山行では、氷河特有のさまざまな現象を体験できる。特にエヴィヒシュネーフェルト氷河が大崩壊して合流している荒荒しく壮大なセラックや氷河上の川、この川の水が大きな渦巻きとなってボコボコと氷河の深みに吸いこまれていく様子には思わず息を止めてしまう。近年痩せたとはいえこのあたり氷河の厚みは800mもある。 1997年に増改築されて、食堂、廊下、寝室すべてが明るく広くなって、氷河の真っ只中にあるとはおもえない設備が充実した素晴らしい山小屋となった。

アルプスの山小屋案内#9 - メンヒスヨッホ小屋(Mönchsjochhütte)

はじめに

今日はベルナー・オーバーラントのメンヒスヨッホ小屋をご案内します。
本記事を読む前に、以下の記事を一読されることをおすすめします。 alpes.hatenablog.com

ユングフラウヨッホ駅からメンヒスヨッホ小屋までの略図
ユングフラウヨッホ駅からメンヒスヨッホ小屋までの略図

山域

ベルナー・オーバーラン

リゾート

グリンデルヴァルト、ヴェンゲン、ラウターブルンネン、ミューレン

ロケーション

メンヒとトルークベルクのコルのオーバーメンヒスヨッホに建つ、グリンデルヴァルトの山案内人組合が管理するプライベート小屋で、メンヒ南東稜基部の岩場に鉄骨で土台を組んだ上に建てられた素敵な小屋である。

標高

3650m

出発地

ユングフラウ鉄道ユングフラウヨッホ駅(3475m)

用具

ストックがあれば有効。

難しさ

最大は標高。視界がよければ楽な雪上の歩行。しかし、3500mをこす万年雪の世界、ひとたび風雪となれば気温は急激に下がり、トラックは消えて、地図と磁石なしでは方向を定める事ができなくなる。

所要時間

ユングフラウヨッホのトンネル出口から小屋まで1時間

カテゴリー

  1. AA
  2. A
  3. AA
  4. A

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コースのアウトライン

晴天の日にはトンネルを出たプラトー(Plateau)は多数のツーリストで賑わっている。アプローチ(4.)のカテゴリーはAとなっているが、6月下旬から9月のシーズン中は小屋まで圧雪車でトレースがつくってある。気象コンディションに恵まれればツーリストも訪れることができるので、Cに近いBのカテゴリーにランクしてもよいアプローチである。
標高差500mあるメンヒの急峻な氷雪の南壁下を約2km。ほぼ1時間のごくゆるい傾斜の楽しい雪上歩きで到達できる。早朝の雪がしまっている時は快適であるけれど、気温の上昇する午後は雪がゆるくなって歩きづらくなる。

ワンポイント

アルプスのなかでは訪れ易い万人向きのアプローチでありながら、標高もあり、さらにヨーロッパ最大のアレッチ水河と広大なエーヴィッヒシュネーフェルト氷河を俯瞰する要に位置して、展望は抜群のロケーションであり、高山の雰囲気をいっぱいに楽しめる山小屋である。
アルプスの山小屋に一度は泊まってみたいという人に推奨できる小屋で、私にとってはアルプスをはじめて訪れた1984年6月のメンヒ登山の時に冬期部屋を利用して以来、冬期にもう一度、小屋番のいるシーズンに3回と計5回泊り、アルプスで利用した21箇所のなかで最も利用させてもらっている。
※ 高山病対策としては、ユングフラウヨッホから小屋まで、ゆっくり行動し、かつ水分を十分に補給して、排尿に心がけることである。

アルプスの山小屋案内#8 - シェーンビール小屋(Schönbielhütte)

はじめに

今日はツェルマットのシェーンビール小屋をご案内します。
本記事を読む前に、以下の記事を一読されることをおすすめします。 alpes.hatenablog.com

シュヴァルツゼー駅からシェーンビール小屋までの略図
シュヴァルツゼー駅からシェーンビール小屋までの略図

山域

ヴァリス ペニンアルプス

リゾート

ツェルマット

ロケーション

シェーンビール氷河とティーフマッテン氷河・シュトック氷河が合流してツムート氷河となる左岸台地(シェーンビール)。
広々とした一面お花畑のアルプに建つ素晴らしい環境の石造りの小屋。

標高

2694m

出発地

ロープウェーのシュヴァルツゼー駅(2583m)

用具

必要はない。

難しさ

標高差があまりないので、楽に歩ける。

所要時間

シュヴァルツゼー〜シェーンビール小屋

3時間

シェーンビール小屋〜ツムート〜ツェルマット

3時間30分

カテゴリー

  1. AA
  2. AA
  3. AA
  4. B

※カテゴリー詳細はこちら

コースのアウトライン

シュヴァルツゼー(Schwarzsee)はロープウェーで簡単にいくことができ、マッターホルンを投影する山上湖のビューポイントである。
そしてこの近くには今は貴重となったアルプスの名花エーデルワイスをみることができる。(具体的な場所は秘中の秘)
スタッフェルアルプまでは幅の広いゆるやかな下りの道で、圧倒的なマッターホルンの北壁を終始仰ぎみながら、足元には咲きみだれる色とりどりの高山植物をめでながらのハイキング。7月初旬頃のスタッフェルアルプでは牛が放牧されていて、この牛達を追うのは20代の娘さんや少年たち若い人達だ。観光客あいての仕事がたくさんあるであろうに、山野をかけめぐるキツイ作業に従事する姿をみるときスイスの本当の国力と素晴らしさをみるおもいがしてくる。
スタッフェルのレストランは右にみて、ツムートの流れを渡って堰を通過するとツムート氷河が後退してできたモレーンの土手の上のルートとなる。氷河側は急峻なガレとなっているが、右側は草花が咲いている緩傾斜で非常に対照的である。氷河側に落ちたら大変だから慎重に歩きたい。

ワンポイント

氷河の中や岩稜といった峻険な場所ではなく、のどかなアルプに建つ小屋で、アルプスでは貴重な存在感がある。お花畑に寝そべって、豪快なツムート稜と西南稜を心いくまで眺められる贅沢が楽しめる。
1863年8月4日、ツェルマットのモンテローザホテルを4時に出したウィンパーとカレルの一行はシェーンビールの先の氷河の中にあるシュトッキー(中ノ島)に7時に到着している。そして、ここから眺めたマッターホルンの岩壁の険しさに「めったに感情を現したことのないカレルが驚嘆の声を発した」と"Scrambles Among the Alps"のなかでウィンパーがのべている。

アルプスの山小屋案内#7 - ミシャベル小屋(Mischabelhütte)

はじめに

今日はザースフェーのミシャベル小屋をご案内します。
本記事を読む前に、以下の記事を一読されることをおすすめします。 alpes.hatenablog.com

ハーニク駅からミシャベル小屋までの略図
ハーニク駅からミシャベル小屋までの略図

山域

ヴァリス ペニンアルプス

リゾート

ザースフェー

ロケーション

レンツシュピッツエ北東稜3329mの岩稜上、小屋からは足元がスカッときれていてザースフェーを真下に望む。

標高

3329m

出発地

ロープウェーのハーニク駅(2350m)

用具

必要はない。しかし、念のため雪渓でピッケルがあれば安心。

難しさ

短いが急峻な雪渓があり、その後にワイヤーがセットされた急傾斜の岩の登りがある。

所要時間

ロープウェーのハーニク駅から2時間30分

カテゴリー

  1. A
  2. AAA
  3. A
  4. A

※カテゴリー詳細はこちら

コースのアウトライン

ハーニクから山の斜面につけられた登山道を西へ、トレンバッハの木の橋をわたってからは南の方向へ、ディステルホルンの尾根にでたところでザースフェーからの登山道と一緒になる。このあたり標高約2400m、眼下にザースフェーを見下ろし、その向こうには右からバイスミース、ラギンホルン、そして4000mにほんのチョットだけ足りないフレッチホルンの三山が行儀よく並んでいる。
尾根からはほどなく左のファル水河に移るが、このあたり年々後退しているので、氷河というより雪渓に近い。はじめのうちは問題ないが再び右の岩尾根にとりつくところは急峻で先行者や下山者の落石には要注意だ。岩場にはところどころワイヤーが設置されているので、デイバック程度ならよいが、翌日の登攀用具一式を背負ってそれなりの重量がある場合は、きちんとした三点確保のバランスクライミイングしなければならない。余裕のある者には眺めもよく、快適な軽い岩登りを楽しめるが、ワイヤーにしがみつくようだったらこのあたりで引き返したほうがよいだろう。

ワンポイント

小屋は二棟あるが、狭い岩場の厳しい条件のスペースのために新しい小屋の寝室の一つはユニークな扇状になっている。そのため要の(足元)部分のスペースが狭く、起床時の身仕度の時はたいへんだ。
当然に眺望は素晴らしいが、小屋から踏みあとのある岩場をホーバルン氷河のみえる3600m付近まで登ると(約30分)レンツシュピッツエからナーデルホルンへの吊り尾根とナーデルホルンの北東稜の美しいスカイラインの壮麗な氷雪の北壁を真近にすることができる。

アルプスの山小屋案内#6 - ブリタニア小屋(Britannia-Hütte)

はじめに

今日はザースフェーのブリタニア小屋をご案内します。
本記事を読む前に、以下の記事を一読されることをおすすめします。 alpes.hatenablog.com

フェルスカンヌ駅からブリタニア小屋までの略図
フェルスカンヌ駅からブリタニア小屋までの略図

山域

ヴァリス ペニンアルプス

リゾート

ザースフェー

ロケーション

ヒンターアラリンとクラインアラリンの鞍部にある。

標高

3030m

出発地

ロープウェーのフェルスカンヌ駅(2991m)

用具

ストックがあれば有効。

難しさ

山腹に造られた広い道の楽な雪上の歩行。

所要時間

ロープウェーのフェルスカンヌ駅から小屋まで45分

カテゴリー

  1. A
  2. A
  3. AA
  4. B

※カテゴリー詳細はこちら

コースのアウトライン

晴天の日のフェルスカンヌは、多数のツーリストが3500mの高所にある展望台(ミッテルアラリン)を目ざして、ロープウェーから地下ケーブルカーへの乗り換えに忙しい。建物から一歩外へでれば、もうそこは万年雪の世界で、小屋までは、圧雪車で整備されたほとんど登り下りのない幅の広い雪の道が続いている。アプローチ(4.)のカテゴリーはBとなっているが、Cの要素をもったBとおもってよい。

ワンポイント

小屋の裏側(北)にあるクラインアラリンに登れば(約15分)、南から東にかけてシュトラールホルン、リンプフィシュホルン、アラリンホルン、アルプフーベル、ティーシュホルン、ドム、レンツシュピッツエさらにザースタール越しにはラギンホルン、ヴァイスミースとミシャベル山群の4000m峰のパノラマを満喫できる。 石造りのガッチリした小屋の正面には分厚い銅版のヒュッテ銘と2枚のレリーフがある。
アルプスの登山活動において、英国人アルピニストの活躍はめざましいものがあるが、その輝かしい歴史のスタートが1854年8月15日のシュトラールホルン登頂であった。この登頂から登山史に英国人が登場し、アルプスで最も4000m峰を有するヴァリス山群だけをみても、38座中26峰の初登頂を英国人登山家がものにしている。 このような経過から、シュトラールホルン登頂の際キャンプサイトとなったであろうクラインアラリンの肩のこの場所に小屋を建て、スイス山岳会に寄贈したもの(であろう)。
なぜスイスのザースフェーに"英国小屋"があるのか疑問におもっていたのであるが、この小屋を訪れて2枚の立派なメモリアルプレートをみて納得した。明日登るシュトラールホルンを仰ぎ見ながら頭のなかで、登山史やヴァリス山群の資料等が整然と交わり、知的充実感を味わった。登山は知的なスポーツだ!
ヒュッテ壁を飾る横顔の浮き彫りレリーフは、英国山岳会会長・スイス山岳会英国人会員会長・スイス山岳会名誉会員、CLINTON-T-DENTとあり、メモリアルプレートは、"Association of British Members of the Swiss Alpine Club"が1912年にこの小屋を建設し寄贈した経緯が彫られている。