このブログを始めるきっかけ - 私の祖父の話
私には今年で86歳になる祖父がいます。
私が幼稚園児の頃から小学5年生まで、1歳年上の従兄弟とともに谷川岳や奥穂高、槍ヶ岳などの様々な山に連れて行ってもらいました。
いわゆるハイキングのような登山ではなく、1週間かけてテントと寝袋を背負い山々を縦走するようなガチ中のガチの登山です。滑落したら"1発アウト"というような雪の斜面を命綱をつけて移動したこともありました。今思い出しても足が震えます。
そんな祖父は、若い頃から登山が好きで、地元の山岳会に入って1年中様々な山に登っていたようです。祖母との出会いも山繋がりだったそう。
退職を機に、1991年、56歳のときから祖父はヨーロッパアルプスの山々への単独登頂に挑戦し始めました。そこから2000年まで、4000m越えだけでも17の山々に登頂しています。その中にはモンブランやマッターホルンといった名前も含まれており、私でもその偉大さがわかります。
マッターホルンは還暦での登頂でした。パスポートを山小屋に預けたからか、先に下山した登山者から噂が広がったのか、登頂後に山小屋に戻ると従業員や宿泊客から盛大な祝福を受けたそうです。でも、疲れ果てた祖父はせっかく出してくださった鶏の丸焼きを一口しか食べられなかったとか笑
単独登頂だからこそ、世界中の登山仲間と山小屋で共有した時間はより特別なものだったことでしょう。
去年の10月、祖父に癌が見つかりました。
一月に1度ほど祖父と顔を合わせていますが、その度に彼はヨーロッパの国々を旅行した話やそれらの国々で山に登った話を楽しそうに話してくれます。
そして昨日、「アルプスの山小屋」、「ヨーロッパアルプス 登山とハイキングの案内」と書かれた2つのクリアファイルを託されました。内容は祖父が10年かけて巡ってきたヨーロッパアルプスの山小屋や登山コースの記録です。
もしこの情報で誰かの人生が豊かになるのであれば公開したい、というのが祖父の希望でした。
私としても、これまで大変な愛情を受けて育ててもらい、最も尊敬する人の一人である祖父に最後の恩返しをしたいという思いもあり、これらの記録を少しずつ公開していこうと思います。